宮川内科・胃腸科医院
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Dr宮川の注目コーナー

  尿で分かること
一度は病院で尿検査をしたことがある方も多いかと思いますが、尿検査では蛋白、糖が出ていないか、血液が混ざっていないかを調べて、腎臓、膀胱の病気がないかをチェックしています。
トイレで流す前に、自分の尿を見ていますか?
実は尿をチェックするだけで身体の状態を推測するための情報が得られます。
色はどうか、量はどうか、臭いはどうか、脱水になると尿が濃縮され濃い色になったり、量が少なくなったりします。

(尿の色)
健康の人の尿は、淡黄色から淡黄褐色です。これは血液を分解したときにでる代謝物であるウロビリンの色です。このウロビリンは常に一定の量が排出されています。
水分の摂取量が多いと、体内の水分量調節のためにたくさんの水が尿として排出されるため、ウロビリンの量も薄まり、透明に近くなります。
体内の水分が多い時は尿が増え色が薄くなり、水分が少なければ尿量が減って濃い色になります。
ただし朝起きた時の尿の色が濃いのは正常です。
睡眠中は尿量を減らす仕組みが働き、尿を濃縮しているためです。日中も朝と同じ濃い尿が出た時は脱水かもしれません。
また、ビタミン12などが入ったビタミン剤を飲んだ時は、尿本来の色より鮮やかな濃い黄色の色がでることがありますが、ビタミン剤の色です。
 水様透明:水分過多、尿崩症、糖尿病など
 黄色:正常
 白濁:膀胱炎、腎盂腎炎など
 褐色:脱水症状、ヘモグロビン尿(放置により黒色化)など
 赤色:血尿、尿路結石症など
 赤褐色:黄紋筋融解症など

(頻度)
 排尿回数は人によりますが、だいたい1日4〜6回で10回以上行くのは異常です。
 頻尿は尿量の増加が無く、排尿回数のみが増加し膀胱に炎症などの刺激があることが考えられます。

(混濁)
 細菌感染による膀胱炎の場合、尿が白っぽく濁る膿尿が出ることもあります。

(泡立ち)
 高度の蛋白尿及びビリルビン尿は表面張力が大きいことにより尿を振ると泡が出てくることが多いです。

(尿の匂い)
 普段の尿はわずかに芳香臭(ねぎ、にんにく、にら、アスパラガスを食べた後の尿、飲酒後の尿は特異な臭気)がするだけですが、病気によってはその病気特有の臭いがします。
  膀胱炎・・・排尿直後により不快なアンモニア臭
  重症の糖尿病・・・甘酸っぱい臭い
  フェニルケトン尿症・・・ネズミの尿のような臭い
  メープルシロップ尿症・・・メープルシロップ様の甘い臭い
  トリメチルアミン症・・・腐敗魚臭
健康な人でも食事や運動などの影響で異常が出る場合があり、必ずしも病気と結びつくとは限りません。
しかし、日ごろから尿を見る習慣をつけることが大事です。
尿は健康のバロメーター、しっかり見て流してくださいね。
何か気になることがありましたら、ご相談下さい。


(2022年6月21日)

  非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
肝臓の病気と聞くとアルコールの飲み過ぎによる脂肪肝や肝炎、B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎が考えられていますが、ここ数年は、アルコールを飲まない人や肝炎ウイルスに感染していない人も脂肪肝や肝炎になっていることがわかりました。その多くは、生活習慣病ともいわれる肥満や糖尿病、脂質異常症に伴うものです。
脂肪肝とは、肝細胞に脂肪が貯まった状態を言います。脂肪肝と診断された方の中には、アルコールを飲まない、ウイルス感染によるものではない脂肪肝やそれによって起こる肝臓の病気は、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の方もいらっしゃいます。
この非アルコール性脂肪肝の中には単純脂肪肝でとどまることが多いですが、1〜2割程が肝硬変や肝細胞癌に進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の存在も明らかになってきました。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)には2つのヒット理論が提唱され、一つ目は、肝細胞への脂肪沈着、二つ目は、酸化ストレス・サイトカイン・鉄・インスリンの抵抗性などがありますが、遺伝的要素も重要です。非アルコール性脂肪肝の頻度は、男性は30〜40%で、女性は、10〜20%です。非アルコール性脂肪肝と診断された方の10〜20%が、非アルコール性脂肪肝炎の報告例があります。非アルコール性脂肪肝炎の性年齢別では、若い世代の男性が多く、女性は閉経を超えると多くみられます。
原因には、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧・急激な体重減少や急性飢餓状態・薬剤などがあります。
症状は、自覚症状はありませんが肝硬変に進行するまではほとんどみられません。肝硬変に進行すると、黄疸、腹水、肝性昏睡、食道静脈瘤出血などの肝不全症状を起こします。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断には、@非飲酒であるかA肝組織あるいは画像検査での脂肪肝の診断B他の原因による肝疾患の除外この3項目が必須になります。
検査は、血液検査や腹部エコー・CT検査・肝生検を行います。血液検査は、血液生化学マーカーはなく、AST(GOT)やALT(GPT)正常の症例も少なくないため、画像診断が必要になります。肝生検は、NASHの診断には必須ですが、痛みやリスクを伴う為、適応となる症例を3項目に上げさせて頂きます。
1.厳重な治療を必要とするNASHの疑いがある
2.肥満や生活習慣の改善ができず、トランスアミナーゼ高値が継続する症例
3.自己免疫性肝炎などの他の肝疾患との鑑別が必要な場合など
治療には、確立した治療法はありませんが、食事療法や運動療法が中心となります。後は、薬物治療や除鉄療法などがあります。
年に1回、健康診断を受けていますか?その健診結果で脂肪肝と指摘されたことはありませんか?自覚症状がないから大丈夫と自己判断せずに医療機関に受診することをお勧めします。健康診断によって早期発見されることもあります。


(2022年7月14日)

  貧血症について
全速力で走ったとしたら、誰でも息が切れます。でも、ちょっと走っただけとか、階段を昇っただけでも息が切れるとしたら、それは何かの病気が潜んでいると考える必要があります。
人は、呼吸によって空気中の酸素を肺の中にとり入れ、その酸素を血液の中へとり込んで、それを心臓の力によって身体のすみずみまで送り、その酸素の力で全身の臓器を動かしています。「息が切れる」というのは、一言で言えば「酸素不足の状態」ということです。

したがって、酸素不足の状態を起こす病気として一番先に考えられるのは、「呼吸に関連する病気」
肺気腫、気管支炎、気管支喘息、肺結核などと「心臓・循環器に関する病気」心不全、心臓弁膜症、狭心症、心筋梗塞などがあります。
呼吸器や心臓・循環器に病気がなくても「息が切れる」病気の一つに、貧血症があります。

●貧血になると酸素が不足する
「呼吸によって空気中の酸素を肺の中にとり入れ、その酸素を血液の中へとり込んで・・・・・・」と説明しました。それをもう少し詳しく言いますと、「酸素を血液の中へとり込み、血液中の赤血球に含まれる血色素という色素と結合させて・・・・・・」ということになります。つまり、酸素を全身へ送るのには、赤血球と血色素の存在が必要なのです
貧血症というのは、血液中の赤血球の数が減っているか、または血色素の量が減ってしまった状態をいいます。つまり、貧血症では他に異常がなくても、全身に送られる酸素が不足することになります。

●貧血の症状
貧血症があると、全身に送られる酸素が不足の状態になると言いましたが、そのことは、別の見方をすれば、酸素のうすい空気の中で生活しているのと同じ状態といえます。その結果、息切れ、動悸、脳貧血、頭痛、頭重などの症状がでます。
また、酸素不足のために、居眠りが出やすくなることもあります。同じ理屈で、貧血症があると、疲れやすい、だるいなどの症状も出てきます。
貧血症は、血液中の赤血球の数、血色素の量が減った状態ですので、皮膚の赤みが減って、顔が青白くなり、爪の色の赤みも減ります。とくにまぶたをひっくり返してみると、まぶたの裏の赤みが減って白くなっているのが貧血症の典型的所見です。
また、爪が薄くて、平らになり、普通とは逆にそってしまうことがあり、スプーン形の爪と呼んでいます。
●貧血症度チェック
□疲れやすく、だるい
□すぐ息切れがする
□顔が青白い
□爪の色が赤みを帯びてない
□爪が薄くて、平らだ
□まぶたの裏が白い
□すぐ居眠りをする
□頭痛、頭重がある
□脳貧血を起こしやすい
□すぐに動悸がする
チェックしてみてください。「Yes」が多いほど貧血症度が高くなります。
●貧血の種類
「再生不良性貧血」「骨髄異形成症候群」・・・赤血球の製造場所である骨髄に原因のある貧血
「鉄欠乏性貧血」・・・材料である鉄分の不足が原因
「溶血性貧血」・・・赤血球の寿命が短くなる の3種類になります。
頻度として一番多いのは、「鉄欠乏性貧血」です。とくに若い女性に、かなりの高い頻度で見られる病気です。
貧血症は徐々に進行している場合は自覚症状があまりないことや、自覚症状があってもその原因が貧血症であることに気がつかないことが多く、治療をせずに放置されているケースがかなりあります。貧血症の原因として、子宮筋腫や大腸がんなどの重大な病気が陰に隠れていることがあります。少しでも疑わしい症状があり、定期健康診断などで貧血症を指摘されたときは、必ず医師に相談してください。


(2022年9月15日)

  過敏性腸症候群について
過敏性腸症候群って、時々聞く病気ですが、今回はこれについて勉強しましょう。
過敏性腸症候群とは
通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌以上などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群です。
排便後に痛みが軽減されるという特徴があります。

原因
はっきりとした原因は分かっていませんが、ストレス、過度な緊張、腸内細菌そうの変化などが関係しているのではないかと考えられています。

過敏性腸症候群の種類
大きく3つに分けられます。
1 下痢型
 激しい腹痛とともに、水っぽい便が出る下痢が、1日に何度も起こります。外出するのが億劫になるほど症状に悩ませるケースもあります。
2 便秘型
 排便時に腹痛が起こり、強くいきまないと便が出なかったり、コロコロと小さな便しか出なかったりして、残便感に悩まされる場合があります。また、慢性的に便秘でストレスを感じるとより悪化する傾向にあります。
3 混合型
 下痢型と便秘型の両方の特徴を併せ持ちます。便が不安定に変動して、下痢と便秘を繰り返すのが混合型です。一般的に多いタイプとされています。
下痢型は男性に多く、便秘型・混合型は女性に多い傾向にあります。

治療について
生活習慣の改善 … 心理的ストレス、過度の飲酒、偏食や早食い、睡眠不足、運動不足などの生活習慣の乱れが発症や悪化に大きくかかわっていると考えられています。
食事療法 … 高脂質食、カフェイン類、香辛料を多く含む食品、人口甘味料、乳製品
(乳糖不耐症の方)などは増悪因子となるので控えるのが望ましいです。
薬物療法 … 排便状態により治療薬は変わります。

ストレスの多い現代社会において過敏性腸症候群は、誰にでも起こる可能性があります。
症状が慢性的に続いてるようであれば一度消化器内科へ受診し症状を詳しく相談することをお勧めします。


(2022年12月19日)

   AI(人工知能)内視鏡について
AI(人工知能)が、医療の分野でも活用されるようになって来ました。当院においてもAI内蔵の大腸内視鏡をいち早く導入し、大腸がんやポリープの検出力や鑑別力が著しく向上してまいりましたので、ここに紹介させて頂きます。
従来の白色光による内視鏡観察に加えて近年、粘膜の表面だけをを可視化する波長を選別してレーザー光を当て細い血管や表面の構造を詳しく観察するBLI(Blue LASER lmaging)と短波長狭帯域光と色調拡張技術を組み合わせることによってわずかな色の差を強調し、観察をするLCI(Linked Color lmaging)があります。消化管粘膜の観察では、正常な粘膜と炎症のある粘膜を見分けなければなりません。
そこに今回、特殊光源(BLI及びLCI)を利用するだけでなく、新たにAI技術を活用して、大腸ポリープなどの病変の検出および鑑別をサポートする内視鏡診断機能が加わりました。

現在、大腸がんは、がんの中でも罹患者数第1位で死亡者数第2位と高い割合を占めています。しかし、初期のがんであれば内視鏡手術や外科手術で切除できる可能性が高く、早期発見が重要とされています。大腸がんの検査は内視鏡検査が一般的ですが、平坦な病変や微小な病変は発見が難しく、発見率を向上させることが課題となっていました。また、切除する必要が比較的低いとされている非腫瘍性の病変の切除件数を減らすことで患者様への負担が減ることや、内視鏡検査による正確な大腸ポリープ診断が求められています。
AIの特徴には、大腸ポリープなどの[病変検出支援機能]と[疾患鑑別支援機能]で構成されています。
病変検出支援機能には、内視鏡画面内にポリープなどの病変と疑われる箇所を検出すると、対象エリアを枠で囲い表示するとともに、検出音を鳴らします。
疾患鑑別支援機能は、ポリープなどの病変と疑われる箇所について、腫瘍性もしくは非腫瘍性の鑑別を表示します。鑑別結果が腫瘍性の場合には黄色で非腫瘍性の場合には緑色と表示します。
人工知能であるAIの技術を用いて、大腸内視鏡時における癌やポリープの検出や鑑別を豊富な経験・知識を持つ医師のダブルチェックにより患者様の負担を少なく正確な検査を行ってまいります。


(2023年1月17日)

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