宮川内科・胃腸科医院
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Dr宮川の注目コーナー

  肺非結核性抗酸菌症
皆さん肺非結核性抗酸菌症という病気は聞いたことはあるでしょうか。
結核は皆さんご存じの病気だと思いますが、肺非結核性抗酸菌症は知らない方も多いのではないでしょうか。
最初は自覚症状がない事が多い病気です。慢性疾患で当院を通院中の患者様がしばしば併発する疾患でもありますので、どんな病気なのか知っておきましょう。


肺結核との相違点
肺結核は、結核菌が引き起こす病気で人から人に感染しますが、肺非結核性抗酸菌症は人から人に感染しません。
感染源
土壌、水、塵埃などの自然環境に広く存在する環境菌で、水系、土壌などに広く分布しています。人の生活環境でも、水道水から菌が分離され、浴室、シャワーヘッドなどに定着することもあります。ほとんどの人が経口的にあるいは吸入することによって、体内に取り込んでいます。
症状
症状がなく、検診の胸部レントゲン検査などで偶然に発見される事が多いです。
一方で、咳、痰、血痰、発熱、呼吸困難、倦怠感などの症状がでる事もたまにあります。
診断
画像検査(レントゲン、CTなど)・・・画像的に繊維空洞型と結節、気管支拡張型に大きく分類されます。
細菌学的検査・・・喀痰の中に2回MAC菌が培養で確認されれば確定します。
治療
数年から10年以上と長い年月をかけて、ゆっくりと進行する病気で、自然軽快することもあるため、軽症の時は経過観察することもあります。
症状や肺の影が悪化する場合は、薬による治療を行う。3種類の抗菌薬を2〜3年間飲み続ける必要があります。
抗酸菌免疫には、栄養状態が大きく関与します。夏バテや風邪を引いて体重減少がないよう気を付けましょう。
かかりやすい人
陳旧性肺結核症、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎など既存の肺疾患を有した方に多く見られていましたが、最近では、基礎疾患の無い中高年の女性に多く見られます。
  
結核菌が年々減少しているのに対し、肺非結核性抗酸菌症は増加しています。
日和見感染症のひとつと考えられており、健康の人では感染症を起こさないような弱い病原体が原因で発症する感染症です。身体の抵抗力や免疫力が低下し、病原菌の増殖が抑えられなくなると、病気が進行していきます。
抵抗力、免疫力を増強するために、十分な睡眠過食や偏食は避け、栄養バランスのとれた食事を心がけるなど、規則正しい生活、心身のリフレッシュが重要です。
人から人への感染はしないので、家族への伝染の心配はなく、周囲の人への特別な配慮は必要ありませんが、自宅内で菌が住み着きやすい場所、浴室、シャワーヘッドなど定期的に掃除をし、清潔に保つように心がけて下さい。
症状が無い方が多くおられます。
健康診断などで定期的に胸部レントゲン検査を受けましょう。

※日和見感染とは…正常の宿主に対しては病原性を発揮しない病原体が、宿主の抵抗力が弱っている時に病原性を発揮して起こる感染症です。


(2023年6月20日)

  腸閉塞について
腸閉塞は、腸管の癒着や血流障害により、腸管の内容物が流れなくなってしまう状態をいいます。その原因には多岐にわたり、再発しやすい状態でもあります。

原因には、大きく分けて2つの原因があります。1つ目は、腸管が狭くなってしまう(狭窄)や腸が折れ曲がってしまう(屈曲)または悪性腫瘍などの機械的閉塞、2つ目は、腸管の形そのものには問題はなく、生まれつきや薬の副作用など何らかの問題により腸の蠕動運動がうまく機能しない機能的閉塞があります。

症状は、腹部の張り・腹痛を感じるようになり、嘔吐をすることが多くなり排便やガスもできない状態になります。痛みの程度は個人差がありますが、軽度ですむ場合もあれば激痛になることもあります。閉塞した箇所より上に消化物がどんどんたまり同時に吐き気や嘔吐の症状がでてきます。腸管の血流障害が生じると、ショック症状を呈することがあり、腸管に穴があいてしまうこともあります。

診断は、問診で過去の病歴を聞き、症状の現れた時期や腹痛の強さを確認し、過去にお腹の手術を行ったことがあるか内服薬の有無などの確認をおこない、触診で判明する可能性があるため、腹部の膨らみや鼠径部(そけいぶ)の観察をします。
検査には、腹部の超音波検査や腹部レントゲン、腹部CT検査、血液検査など。腸管の血流障害の有無を確認する場合には、造影剤を点滴してCT検査を行う事もあります。

治療は、症状の重さや閉塞の原因により内容が異なります。軽い症状の場合には、保存療法で行います。保存療法は、絶食をし点滴で栄養補給をします。保存療法で症状の改善がない場合や重症の場合には、手術になります。

予防として便秘は腸閉塞の原因になるため、普段から便秘をしないように食生活に注意し、排便の習慣性をつけ、運動不足や食べ過ぎにも注意が必要です。そのため、食べすぎ早食いは避け、水分をこまめにとることで予防につながります。
排便が急に止まった時やお腹の痛みがある場合は、かかりつけ医に相談して下さい。


(2023年7月14日)

  食後高血糖について
近年、空腹時血糖が正常もしくは境界域であっても、食後に血糖値が上昇しやすい「血糖値スパイク」(食後高血糖)が、リスクとして注目されています。食後の血糖値が高い状態が続くと、様々な健康上のリスクがあると言われています。
食後高血糖とは?
食後2時間が過ぎても、血糖値が高い状態のこと。食後は誰でも一時的に血糖値が高くなりますが、通常であればインスリンがすぐ分泌され、食後約2時間以内には正常値に戻ります。食事をしてから2時間後に測った血糖値が140mg/dl以上ある場合、食後高血糖と判断されます。これはインスリンの分泌が少なかったり、働きが不十分だったりすることから、食後に血糖値が急上昇しているためです。
食後血糖値が高い状態が続くと、糖尿病を発症したり予備群である疑いがあり動脈硬化の危険因子としても重要で、放置しておくと血管障害が進み脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす恐れがあります。糖尿病を診断する空腹時血糖値が正常だったり境界域にある場合でも、食後の血糖値だけ大幅に上昇する場合があります。こうした症状は「隠れ糖尿病」である疑いがあります。
日常に取り入れやすい血糖値対策
要注意な「血糖値スパイク」ですが、“食後の血糖値”を毎日しっかり意識し、食事や生活を工夫することをおすすめします。
食事での対策
まずは日常の生活に必要な量を食べ、余分には食べないようにすることです。食べる量は少なければ少ないほど良いのではなく、多くも少なくもない適正な食事量です。適正な食事量は年齢・性別・体格・体を動かす程度などによって人それぞれに異なりますから、主治医に決めてもらいましょう。
次に栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)の過不足がないように、栄養バランスの良い食事をすることです。好き嫌いなく、いろいろな食品を食べることが大切です。食べてはいけない食品は基本的になく、「糖尿病になってしまったから、おいしいものが食べられない。」「お菓子はもう食べられない。」ということを聞きますが、食べすぎさえしなければ食べられます。
さらには味付けを薄くし、塩物や干物などの塩分の濃い加工品をひかえることによって食塩を減らして(男性8g未満、女性7g未満)、高血圧を予防します。また脂身の多い肉などコレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品をひかえて、脂質異常症を予防します。野菜・きのこ・海藻などにより食物繊維を豊富に摂取します。これらによってより効果的に合併症の発症を予防できます。
以上の食事上の注意点は、糖尿病のあるなしにかかわらず大切なことです。食事は腹八分目にして好き嫌いなく食べるということが大切です。まずは現在の食事内容を把握して、修正するべき点を見つけ、そのうえで食事療法を実行した方が負担は少ないでしょう。
運動での対策
ウォーキングなどの有酸素運動
糖質を消費するために、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を取り入れるのが良いと言われています。運動不足の方は、手軽に始められるウォーキングを食後にやることから始めてみましょう。
日常生活でのこまめな動き
私たちが消費しているエネルギーで大きな割合を占めているのが、日常生活でのこまめな動きだと言われています。運動が苦手な人や、運動をしたくても忙しくてできない人などは、「階段を使う」「近場なら歩く」など日常生活の中でこまめに動くことを心がけましょう。


(2023年8月15日)

  大腸がんを早期に診断するために
 近年食生活の欧米化に伴い、大腸がんが増えており、大腸がんによる死亡率は男性2位、女性1位となっています。
 大腸は消化吸収された残りの腸内容物を貯留し、水分を吸収しながら大便にするところです。
 大腸は盲腸より始まり、上(頭側)に向かう部分が上行結腸、次いで横に向かう部分が横行結腸、下に向かう部分が下降結腸、S状に曲がっている部分がS状結腸、その後直腸となり、肛門へ至ります。長さ1.5〜2m程の臓器です。大腸がんはこの全ての部分にできる可能性があります。腺腫という陽性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。特にS状結腸、直腸に発生します。
 症状は、がんのできる部位によって異なりますが、血便、下血、便秘や下痢を繰り返す。便が細くなったり、便が残る感じがする残便感や、お腹の張りを訴える人もいます。また体重減少や貧血によるふらつきを訴える人もいます。しかし、早期癌の段階ではほとんど症状がなく、進行癌になっても症状が出ない事もしばしばあります。
 関連する疾患として、遺伝性の病気である家族性大腸腺腫症や、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる潰瘍性大腸炎や、クローン病などの病気がある人は大腸がんになる可能性が高くなることが報告されています。
 ただし大腸がんと診断されても、早期に発見できれば完治することも可能です。一般的には本当の早期には自覚症状がありません。無症状の時に発見することが重要となり、早期発見早期治療が大切となります。
 早期発見のためには、大便の潜血反応がよく知られています。これは食事制限無く、簡単に受けることができ、便を提出すれば検査できます。もっと詳しく調べるには、食事制限、下剤の内服など前処置が必要ですが、大腸内視鏡検査を受けることもできます。いずれにせよ早期発見のために症状があればもちろんですが、症状が無くても定期的に便の検査を受けることをお勧めします。何か気になる症状がありましたらご相談下さい。


(2023年9月12日)

  糖尿病性腎症について
糖尿病性腎症とは、名前の通り糖尿病の合併症です。糖尿病腎症は、糖尿病が発症してすぐに症状が出ることはありませんが、高血糖の状態が長く続いた場合には腎臓が傷んでしまうことで発症してしまうことがあります。

腎臓の働きは、@体の水分量の調節A老廃物の排泄B電解質のバランスを保つC血液の弱アルカリ性に保つD血圧の調整E血液を産生する為のホルモンの分泌F骨を作るビタミンDを活性化などがあります。

糖尿病腎症の発症初期は無症状のことが多いですが、腎機能が低下すると調節機能が弱まり様々な症状や合併症がおこります。腎臓機能の低下が進行すると、末期腎不全に至り腎臓の機能を代行する治療である透析療法が必要になります。
症状は、糖尿病腎症に限らず腎臓病は自覚症状があまりないため気づきにくいことがあります。進行すると体の余分な水分や老廃物を尿として体の外に排泄する機能が弱まり、むくみや気分が悪くなったりするなどさまざまな症状を引きおこし、さらなる合併症を起こすことがあります。
検査は、定期的に尿検査や血液検査を行います。尿検査でわかることは、腎臓は血液をろ過し、体に必要なものを残し不要なものを排泄する機能を持っています。アルブミンやたんぱく質などは体に必要な栄養素なので正常な腎臓から尿に排泄されることはありませんが、腎臓が傷んでいるとアルブミンやたんぱく質が多く排泄されます。血液検査では、クレアチニンという項目で分かります。この尿検査や血液検査の結果から腎症の進行状態が5期に分けられます。第1期(腎症前期)第2期(早期腎症期)第3期(顕性腎症期)第4期(腎不全期)第5期(透析療法期)と、進行度により治療法が変わり、食事や運動療法なども内容を変更することがあります。
治療に関しては、血糖値だけではなく血圧や脂質のコントロールなど、様々な側面からの治療が、大切です。
血糖コントロールは、予防や悪化を防ぐため大切です。目標値は、一人ひとり違いますので主治医に確認しましょう。高齢者の場合は、低血糖に注意します。低血糖を避けるためには、食事療法や運動療法、薬物療法は、主治医の指示の下、慎重に行う事が大切です。
血圧のコントロールにより腎症の悪化が抑えられることがあります。
生活習慣の改善には、適正な体重を維持することや、禁煙、過剰なアルコール摂取を避けることが大切です。
食事療法は、塩分やたんぱく質の摂り過ぎにより腎臓に負担がかかることがあります。腎症の段階により食事療法がありますので主治医や管理栄養士に相談しましょう。
運動療法は、適度な運動で体重の維持や減量、身体機能などにいいと思いますが、激しい運動などは、注意が必要です。
予防は、血糖コントロールと動脈硬化予防の両方を行う事が大切です。糖尿病腎症の発症や進行と関連があるとされているのが、血糖コントロールの不良、高血圧、脂質異常、喫煙などです。生活習慣の改善を心がけ、糖尿病腎症の予防を目指しましょう。


(2023年10月12日)

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