宮川内科・胃腸科医院
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Dr宮川の注目コーナー

  生活習慣病のひとつ、脂質異常症を知ろう
<脂質異常症とは>
脂質異常症とは、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪が多過ぎる病気のことです。
脂質異常症には、
(1) LDLコレスレロールが多いタイプ(高LDLコレステロール血症)
(2) HDLコレステロールが低いタイプ(低HDLコレステロール血症)
(3) トリグリセライド(中性脂肪)が多いタイプ(高トリグリセライド血症)
の3つのタイプがあります。

<脂質異常症は動脈硬化の大きな危険因子>
狭心症や心筋梗塞などを含めた心臓病と、脳出血や脳梗塞などの脳卒中が、常に日本人の死因の上位を占めていることをご存知でしょうか。これらはどちらも、動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。
動脈硬化というのは、心臓からからだの各部分へ血液を運ぶ動脈が硬くなることです。動脈の内側の壁にコレステロールがたまって血管が盛りあがって狭くなり、それとともに血管が硬くもろくなってしまい、血液が流れにくくなったり、血管に血栓(血管の成分や血管壁がはがれたものなど)がつまりやすくなることが問題なのです。

<脂質異常症を防ぐために、まずは食事のコントロールを>
脂質異常症は、遺伝子異常や他の病気に伴って現れるものもありますが、過食、高脂肪食、運動不足などの悪い生活習慣や、それによる肥満が原因で発生します。つまり、食事にからんだ要因がいちばん多いのです。脂質異常症を防ぐにはまず、食事に心を配って食生活を適正に保つことが重要になります。
 脂質異常症を防ぐための食生活では、次の6項目が重要です。
(1) 偏らず「栄養バランスのよい食事」を。
(2) 摂取総エネルギー量を抑えて、適正な体重を保つ。
(3)飽和脂肪酸(おもに獣肉類の脂肪)1に対して不飽和脂肪酸(おもに植物性脂肪や魚の脂)を1.5〜2の割合でとる。
(4)ビタミンやミネラル、食物繊維もしっかりとる。
(5)高コレステロールの人は、コレステロールを多く含む食品を控える。
(6)中性脂肪が高い人は、砂糖や果物などの糖質と、お酒を減らす。
食品中のコレステロールというと、コレステロールを多く含む食品ばかりを気にしがちですが、体内のコレステロールを増やしやすい食品もあるので、それを避けることはもっと大切です。
血中のコレステロールを増やす食品には、脂肪の多い肉、バターやチーズなどの乳脂肪分とその加工品、チョコレート、ポテトチップス、即席麺などがあります。逆に体内のコレステロール値を下げる働きをする食品には大豆製品や青魚、野菜、海藻類、果物、オリーブ油や菜種油などの植物油があります。コレステロールを上げる食品は少量でも体内のコレステロールを増やしやすいので注意が必要ですし、下げる食品は積極的にとることをおすすめしますが、果物や油はとりすぎに注意してください。また、ポテトチップスは食品としては全くコレステロールを含んでおらず、チョコレートや即席麺に含まれるコレステロールもわずかですが、体内でコレステロールを増やす働きがあります。すでに高コレステロールといわれている人は、マヨネーズ、魚卵、レバー、イカやタコなどのコレステロールを多く含む食品も控えめにとるようにしましょう。

脂質異常症は、家族性コレステロール血症以外、初期には自覚症状がまったくありません。けれど、ほかの生活習慣病もそうであるように、早く見つけて早く対処することがとても重要です。
当院でも、採血にて検査をすることができますので、気になる方は医師にご相談ください。

(平成27年3月20日)

  AEDとは何でしょう?
AEDとは自動体外式除細動器のことをいいます。救急の現場で一般の人でも、簡単に安心して除細動(電気ショック)が行うことができるよう設計されています。
小型の器械で、体外(裸の胸の上)に貼った電極のついたパッドから自動的に心臓の状態を判断します。もし心室細動という不整脈(心臓が細かくブルブルふるえていて、血液を全身に送ることができない状態)を起こしていれば、強い電流を一瞬流して心臓にショックを与えること、いわゆる電気ショック行い、心臓の状態を正常に戻す機能を持っています。
器械の電源を入れれば音声が使い方を順に指示してくれるので、誰でもこの器械を使って救命することができます。
AEDは、駅や市役所、ショッピングモールなどの公共施設や学校などに設置されています。

心室細動を起こすと、1分経過するごとに約10%、助かる確率が減っていくといわれています。救急車が現場に到着するまでの時間はおよそ8分かかるとされており、救急車を待っていたのでは助かる確率がかなり低くなります。119番に連絡するまでに数分かかったとすれば、さらに助かる可能性は低くなるのです。
しかし、AEDの登場で、人が倒れた場所の近くにこのAEDがあって、そこにいる人たちがすぐに操作をすれば、助かる可能性が高くなりました。

AEDは初めての人でも簡単に使えるように設計されています。
○手順1
電源を入れると音声の指示が始まります。種類によってはフタを開けると電源が入るものもあります。
○手順2
右胸の上部(鎖骨の下)と左胸の下部に電極パッドをはります。
※胸が汗などでぬれている場合は拭き取っておきます。シップ薬などもはがしておきます。
※ペースメーカーなど皮膚の下に何か埋め込まれている場合はそこを避けてはります。(皮膚の下に硬いこぶのようなものがあります。)
※就学前の子どもには、子ども用パッドか小児モードに切り替えます。ない場合は大人と同じパッドを使います。
○手順3
AEDが自動的に心電図を解析し、音声などで指示を出します。電気ショックが必要な場合は「電気ショックが必要です」と音声が流れ、充電が始まります。
充電が終わり、「ショックボタンを押してください」の音声や充電終了の連続音が流れ、ショックボタンが点滅します。
「離れて」とまわりの人に注意し、誰も触れていないことを確認し、ショックボタンを押します。
※AEDはまた心電図を解析して、2分ごとに電気ショックが必要か否か指示をしてくるので、それに従います。
※電気ショックが必要ない場合にはボタンを押しても電気が流れませんので、操作を間違って電気が流れるようなことはありません。
※AEDと併せて心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行うことも重要です。

AEDは初めての人でも使うことができますが、人が倒れたときなどは、なかなか冷静に動けないものです。AEDの使い方だけでなく119番への通報や心臓マッサージ(胸骨圧迫)なども含め、消防署や講習会などで一度、救命救急の方法を経験してみませんか。

(平成27年8月25日)

  カンピロバクターによる食中毒について
「カンピロバクター」はサルモネラ菌やO157、ノロウイルスなどに比べて、あまり聞き慣れない食中毒の菌かもしれません。しかし、最近、増加傾向にある菌で、年間2000人から3000人もの患者が出ています。これは、ノロウイルスに次いで2番目に多い数字なので、決して侮れません。

1.カンピロバクターとは?
ニワトリ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの動物の消化管内に高率に住み着いている食中毒をおこす細菌です。
菌は乾燥に弱く、室温では長く生きることはできませんが、温度が低く湿潤していて、酸素にさらされないほど生存日数が長くなります。そのため、冷蔵庫内はカンピロバクターの生存に好ましい環境と考えられます。

2.感染経路
食中毒集団発生で原因食品が判明した事例では、肉類が最も多く、大半は鶏肉およびその内臓肉です。
牛レバーの生食による例も見られます。
その他に、ペットからや、乳幼児収容施設での流行、井戸水や湧水、簡易水道水などの消毒不十分な飲用水による感染事例もあります。

3.主な症状
潜伏期間は1〜7日(平均2〜3日)で、他の食中毒と比較して長いのが特徴です。
カンピロバクターに感染すると、比較的少ない菌数でも腸炎を発症します。
主な症状は下痢(水様便、まれに血便や粘液便)、腹痛、発熱です。この他、頭痛、悪寒、倦怠感、筋肉痛などが現れることもあり、初期症状は風邪と間違われることもあります。
2〜5日程度で回復しますが、まれに感染後にギラン・バレー症候群(急速に手足の筋力が低下し、腱反射の消失を主徴とする病気)などを起こすことがあります。

3.治療方法
軽い症状の場合では、抗菌薬治療をしなくても自然に軽快することも多くあります。
急性腹症、他の原因による食事療法などと見分けながら、食事療法、脱水の予防・治療などを行います。
整腸剤は投与しますが、腸の蠕動を抑えるような薬剤は使用しないのが原則です。

4.予防法のために
カンピロバクターは、低温に強く、低温環境下でより長時間生存することができます。
カンピロバクターの最大の弱点は「熱」です。
肉の色が変わるまできちんと加熱することで菌は死滅します。目安は、65度以上の熱で数分間(中心の温度が75度以上で1分間)しっかり火を通すことが大切です。特に菌が多いとされる鶏肉は注意が必要です。ささ身の湯通し程度では死滅しないと考えてください。
また、カンピロバクターはわずかな数であっても感染する恐れがあるので、二次感染にも注意しましょう。生肉と他の食品を扱う調理器具と区別すること、生肉を扱った後は手指を十分に洗浄することも重要です。
他にも、未殺菌の飲料水(野生動物の糞などで汚染される可能性のある井戸水など)を飲まないこと、小児ではイヌやネコなどの保菌動物への接触で感染することもあるので、便などに触らないなどの注意が必要です。

(平成27年9月25日)

  溶連菌感染症について
空気が乾燥し、気温が低くなるこれからの季節。
冬季に流行するのはインフルエンザだけではありません。喉の痛みを伴う「溶連菌感染症」についても知識を深めておきましょう。

1.溶連菌感染症とは
A群β溶血性連鎖球菌による感染症です。喉に感染して咽頭炎や扁桃炎を引き起こします。
風邪に似た症状ですが、治療には抗生物質の服用が必要になります。
小学生から中学生にかけてよくみられる病気ですが、大人も感染します。
学校などの集団感染や、家庭内での家族感染も多くみられます。

2.主な症状
流行時期は冬季・春から初夏にかけてです。
主な感染経路は、感染している人の咳・くしゃみなどによる飛沫感染です。
潜伏期間は2〜3日で、突然に発熱し、熱は38〜39度の高熱になり、喉の痛みや扁桃炎を起こします。
その後に赤い発疹が首、胸、手足などに出始め、全身に広がることもあります。
また、溶連菌感染症の特徴的な症状として、舌にイチゴのような赤いプツプツができる「イチゴ舌」と呼ばれる症状が現れてきます。

3.治療方法
抗生物質を10日間内服します。
抗生物質は医師の指示どおりきちんと飲みきることが大切です。
当院ではまず、半分の日数分処方します。その後、薬がなくなる前にもう1度来院診察し、残りの日数分処方します。抗生物質が効いていることを確かめるため2度に分けて処方しています。
また、発病してから3週間後に尿検査をし、尿に異常がないことを確認します。

4.合併症について
合併症としては中耳炎、気管支炎、リンパ節炎などがあります。
また、近年では減少傾向にありますが急性腎炎を起こすこともあります。
全身の関節が痛みを伴った炎症を起こしたり、心内膜炎を発症することもある、リウマチ熱も主な合併症のひとつです。

5.家庭の中で気をつけること
(1)食事について
のどに刺激の強い、熱い・辛い・すっぱいものは避けましょう。
食べ物は、のどごしがよいゼリーやヨーグルト、消化の良いおかゆやうどんにしましょう。
食べるのがつらい場合は水分だけでもしっかりしましょう。(ただし、炭酸は刺激が強いため×)
(2)入浴について
熱が下がっていれば、入浴しても問題ありません。
発疹が出ている場合、お湯を熱くするとかゆみが強くなりますので、温めすぎないようにしましょう。
※家族に感染者がいる場合には多く接触することは避け、手洗いうがいを徹底し、マスクの着用をしましょう。

6.登園・登校について
抗生物質が効いて(2日後)熱が下がり、症状が落ち着けば、登園・登校は可能です。

(平成27年11月25日)

  長引く咳の原因は?咳喘息について
みなさんは「喘息」と聞くとどのような症状をイメージしますか?
咳が続き、ヒューヒューゼーゼーと苦しそうな呼吸をしている様子が思い浮かぶのではないでしょうか?
実はそれは「気管支喘息」といわれるもので、「咳喘息」の症状とは違います。
“呼吸は苦しくないけれど咳だけが長引いている”そんな症状がある場合、もしかしたらそれは「咳喘息」かもしれません。

咳喘息とは、気管支喘息になる一歩手前の状態と考えられています。

□風邪のあとに咳だけがいつまでも残り、風邪薬や咳止めを飲んでも効かない
□8週間以上慢性的な空咳が続いている
□気管支喘息のような喘鳴(ヒューヒューゼーゼー)や呼吸困難を伴わない
□気管支喘息にも使用する気管支拡張薬の吸入で楽になる
□咳は夜間から明け方に出ることが多い
□冷たい空気やタバコの煙などの刺激、会話中や運動中に咳き込みやすい
□胸部レントゲン検査で異常がない
□アレルギーがある

上記の条件が当てはまる場合、咳喘息が最も疑われます。
咳は痰を伴わない空咳のことが多く、軽い咳から始まって次第に悪化する人もいれば、突然のひどい咳にみまわれる人もいます。
咳喘息の患者さんの約3割が将来気管支喘息になるといわれており、早期に治療することが大切です。

咳喘息の治療についてですが、気管支喘息と同じように気道が過敏な状態が続いているため、風邪薬や抗生物質、咳止めの薬はほとんど効果がありません。咳喘息の治療には、
○気管支拡張薬(気管支を拡張させて空気の通り道を広げる薬)
○気道の炎症を抑えるための吸入・経口のステロイド薬
を使用します。特に、吸入ステロイド薬の使用は“咳症状の治療”とともに“気管支喘息への移行を予防”する効果が期待できます。

また、予防として日常生活では、
・風邪やインフルエンザに注意をし、気道に炎症を起こさせない
・気管支に刺激を与えないためにも、禁煙をする(周りに喫煙者がいる場合は分煙・禁煙をお願いする)
・掃除をし、アレルギーを引き起こす原因となるハウスダスト・カビ・花粉などを排除する
・咳喘息の発作を引き起こす急激な気温の変化に注意する
ようにしましょう。

気管支喘息や咳喘息以外にも、咳の続く原因として、咳喘息と症状がよく似ているアトピー咳嗽(がいそう)、胃食道逆流、副鼻腔気管支症候群、COPDなど色々あります。
それぞれ治療に使用する薬剤は異なりますので、医療機関を受診し、適切な治療をうけましょう。

(平成28年1月19日)

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