宮川内科・胃腸科医院
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Dr宮川の注目コーナー

  がん教育の推進について ----- 科学的根拠に基づくがん予防 その2
その2の今回は癌を予防するためにできることをお話します。

*癌の1次予防(癌になる人を減らすためにできること)
 
《喫煙:タバコは吸わない。他人のタバコの煙は避ける》
喫煙は肺癌をはじめとする種々の癌のリスク因子となっています。
能動喫煙により肺癌になるリスクは男性では約4倍、女性では約3倍に上昇します。受動喫煙によっても非喫煙者の肺癌になるリスクは約3割上昇すると報告されています。

《飲酒:節度のある飲酒をする。》
多量の飲酒は癌になるリスクを高くします。特に食道癌、大腸癌と関連が強く、女性では乳癌のリスクが高くなります。
飲酒する場合は1日アルコール23g程度までにすることが良いとされています。
※アルコール23gは、日本酒1合、ビール 約500ml、焼酎 原液で120ml、ウイスキー 原液で60ml、ワイン250ml相当です。

《食事:食事は、偏らずバランスよく。塩分は最小限に、野菜や果物不足にならないように。》
〔塩分摂取について〕
高濃度の塩分は、胃癌のリスクを高めると考えられています。塩分を抑えることは、高血圧や循環器疾患のリスクの低下にもつながります。
一日の塩分摂取量を、男性は8,0g未満、女性は7,0g未満にすることが推奨されています。
〔野菜や果物摂取について〕
野菜と果物の摂取量が少ない人ほど癌のリスクが高いとの報告があります。特に、食道癌・胃癌・肺癌において関係があるとされています。
野菜をとることは生活習慣病の予防にもなるので、1日350gの野菜を摂取することを目標としたいですね。

《日常生活を活動的に過ごす》
身体活動量が多い人ほど、癌の発生リスクが低くなるという報告があります。
厚生労働省によると、18歳〜64歳では、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと」、それに加え「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度行うこと」、65歳以上では「強度を問わず身体活動を毎日40分行うこと」を推奨しています。
運動は心疾患のリスクも低くするので、今より少しでも体を動かす時間を増やしていきたいですね。

《適正体重を維持する》
癌を含むすべての原因による死亡リスクは、太り過ぎでも痩せすぎでも高くなるとの報告があります。
健康でいる為には、男性はBMI21〜27、女性はBMI21〜25になるよう体重管理することが重要です。
※BMIとは肥満度を示す指標で、体重〔kg〕÷(身長〔m〕×身長〔m〕)で計算できます。

《感染:肝炎ウイルスやピロリ菌の検査と退治》
日本人の癌の原因として、女性で1番、男性でも2番目に多いのが「感染」です。
B型・C型肝炎ウイルスと肝癌、ピロリ菌と胃癌、ヒトパピローマウイルスと子宮頸癌の関係が有名です。
いずれの場合も、感染すると必ず癌になるわけではありません。感染の状況に応じた対応をとることで癌は防げるので、定期的な検診をうけ感染の有無を確認したいですね。

上記にあげたことは、癌を予防するだけでなく、生活習慣病等の予防にも繋がります。
健康に楽しく過ごしていく為に、少しずつできることをとりいれていけたらいいですね。

その3に続きます。



(平成30年3月19日)

  がん教育の推進について ----- 科学的根拠に基づくがん予防 その3
その3の今回は、癌を早期発見・早期治療するためにできることをお話しします。

*癌の2次予防(癌の早期発見・早期治療)
1次予防でどんなに気をつけても、100%癌を予防することはできないので、定期的な癌検診は必要です。
無症状の状態で発見された癌は、進行癌が少なく早期に発見できることが多いので、無症状でも定期的に検診を受けたいですね。
現在行われている対策型癌検診(公的な予防対策として行われる検診)は、市区町村で行われる住民検診、職場で行われる職域検診があり、対象年齢や検診間隔はそれぞれ異なりますが、胃癌・大腸癌・肺癌・子宮頸癌・乳癌の5種類が行われています。
住民検診は、市区町村より案内が送付され、委託を受けた医療機関で検診を受けることができるものもあります。
当院でも、大腸癌検診(便潜血検査、必要時大腸内視鏡検査)を行うことができます。
またその他にも、胃カメラ検査、特定健診、前立腺癌検診、肝炎ウイルス検査、結核検診等も行っておりますので、お気軽に御問い合わせください。


(平成30年3月19日)

  血便について その@
 みなさん、自分の便がどのような便か観察していますか? 
便は、長い消化管の中を通って出てきます。消化管のなかに異常があると、それが便の色や形に現われることがあります。便に血が混じるなどがその一例です。
 消化管は、口から肛門までつながっていますが、この何処かで出血し、血液が肛門から出て来る事を「下血」と言います。その中で、食道や胃等の上部消化管出血からの「下血」は、胃酸にさらされることで酸化し、黒色の便(タール便)となって出てきます。小腸から肛門までの下部消化管からの「下血」は、暗い赤色から新鮮血であることが多く、「血便」とよばれています。
 今回は、「血便」の原因にはどのような病気があるのか見ていきたいと思います。

@大腸ポリープ・大腸癌編
《大腸ポリープ》
 大腸の表面の粘膜の一部がイボのように隆起したものをポリープと言います。大腸ポリープはその構造から、「腫瘍性」と「非腫瘍性」に分けられます。大腸癌になる可能性が高いのは「腫瘍性」の「腺腫」です。「腺腫」のうちにポリープを取ってしまう事で、癌化を防ぐ事ができます。
 大腸ポリープのほとんどが無症状ですが、大きな物では血便が生じる事があります。大腸ポリープを見つけるには、便に血が混じっていないかを調べる、「便潜血検査」を行います。2日間の便を調べ(常にポリープから出血しているとは限らないため)、一日でも血が混じっていたら、一般的に内視鏡検査を行ないます。

《大腸癌》
 大腸癌は、正常な粘膜から「腺腫」が生じ、それが悪性化して癌になる場合と、正常な粘膜から直接癌が生じる場合があります。早期の大腸癌は自覚症状がない事が多いので、検診での便潜血検査をきっかけに発見される事が多いです。進行すると、部位により生じやすい症状に違いはありますが、血便や便秘、下痢、便柱狭小化などの症状を呈するようになります。
 もっとも生じる頻度の高い血便は、痔核でもみられるため、「痔だろう」などと思いがちですが、そのままにしておくと、癌が進行していくため、早期に受診する事が大切です。

 便潜血検査により、すべての癌、ポリープを発見出来るわけではありませんが、進行癌の約80%、早期癌の約50%、腺腫などのポリープの約30%を見つける事ができ、その結果、大腸癌の死亡率を約60%、大腸癌になるリスクを48〜80%下げる事が報告されています。
 殆どの市町村では、40歳以上の方の大腸癌検診(便潜血検査)を公費で負担しており、一部の自己負担で検査を受けることができます。大腸癌による死亡数は、女性では全ての癌の中で1位、男性では3位と、死亡率がかなり高いため、40歳以上の方は、少なくとも1年に1回検診を受ける事がすすめられています。
 
Aの感染症編へ続きます。


(平成30年6月30日)

  血便について そのA
A感染症(食中毒)編
《腸管出血性大腸菌(O-157)》
 充分に加熱していない肉や野菜などの食物、井戸水や湧水が原因となります。潜伏期間は3〜5日、無症状から、著しい血便と共に重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々です。多くの場合、激しい腹痛を伴う頻回の水様便の後に、血便となります。血便の初期には血液の混入は少量ですが、次第に増加し、典型例では便成分の少ない血液そのものという状態になります。

《赤痢アメーバ》
 汚染された水、野菜や果物、肉を生で食べることで感染します。潜伏期間は、通常2〜4週間で、下痢、粘血便、しぶり腹(便意はあっても排便が無い、便意はあっても少量しか出ず頻回に便意をもよおす状態)、排便時の下腹部痛が見られます。典型例では、イチゴゼリー状の粘血便が見られ、数日〜数週間の間で良くなったり悪くなったりを繰り返します。

《細菌性赤痢》
 汚染された食べ物、生水より感染します。海外渡航中に感染する例が多く、人から人への二次感染も起こります。潜伏期間1〜3日の後に全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢により発症します。発熱は1〜2日続き、腹痛やしぶり腹、膿粘血便が見られます。

《カンピロバクター》
 十分に加熱していない肉(特に鶏肉)、十分に洗っていない野菜、井戸水や湧き水が原因となります。1〜10日(平均3〜5日)の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、腹痛、嘔気、下痢(一般的に水様便)などの症状が出現し、血便や粘血便を伴うこともあります。

《サルモネラ》
十分に加熱していない肉、卵、魚などが原因となります。通常8時間から48時間の潜伏期間の後に発症します。一般的な症状は、急性胃腸炎で、悪心、嘔吐で始まり、数時間後に腹痛、下痢をおこします。下痢には血便を伴うこともあります。

 《腸炎ビブリオ》
 生の魚介類が原因となります。潜伏期間は12時間前後、主症状としては耐え難い腹痛、水様性や下痢(まれに血便)、発熱、悪心、嘔吐が見られます。

 これからの梅雨時、夏場は食中毒が発生しやすい季節です。調理前・食事前・トイレの後の手洗いを徹底する事、また食品の管理や調理方法に気を付け、食中毒を予防していきたいですね。

Bのその他篇に続きます。


(平成30年6月30日)

  血便について そのB
Bのその他篇です。
《痔核》
 痔核とは、肛門を閉じる働きをする部位に、排便時のいきみや、長時間の同一姿勢、重い物を持ち上げるなどで負荷が掛かり、うっ血することでできるいぼ痔のことです。肛門の内側に出来る内痔核と外側に出来る外痔核があります。
 内痔核では、排便時に出血し、トイレットペーパーに鮮血が付いたり、シューっと迸って便器が赤く染まる事があります。軽度の内痔核では痛みを伴いません。
 外痔核は、痛覚を伴う皮膚に出来るため痛みを伴い、出血することもあります。

《裂肛》  
 切れ痔の事です。排便時に出血と痛みがあり、排便後にも傷みが持続するのが特徴です。

《虚血性大腸炎》
 高齢者に多く、動脈硬化などの血管側の要因と、便秘などによる腸管側の要因が絡み合って起こります。症状は突然の左下腹部痛から始まり、それに引き続き、水様性の下痢や下血が見られます。

《潰瘍性大腸炎》
 10歳代後半から30歳代前半に好発する、原因不明の炎症性疾患です。下痢、粘血便、腹痛、発熱などが症状としてみられます。

《薬剤性出血性大腸炎》
 抗生剤(特にペニシリン系)摂取数日後に、血性の下痢、腹痛で急激に発症します。トマトケチャップ様の血便が出ますが、初発時は水様便の事もあります。 

《大腸憩室出血》
 憩室とは、大腸壁の弱くなった部位が大腸の圧迫によって外側に袋状に押し出されたものの事で、内視鏡で見ると、くぼみのようになっています。この、大腸憩室の合併症の1つである大腸憩室出血は、高齢者に好発し、典型例では、無痛性の下血、血便で発症します。

 今回紹介したのは、血便が出る病気の一部です。血便が出る原因には様々なものがあり、なかには命に関わる病気もあります。そのため、血便が出たときは、自己判断で「大丈夫」と思わず、医療機関を受診することをお勧めします。
 受診する際には、血便の色(黒いか、赤いか)、量(多いか、少ないか)、血便の色が赤い時は、血液と一緒に粘液がまじっているか、便の表面に血液が付着しているだけか、便と血液がごちゃまぜに混ざっているか、血液だけ飛び散るように出ているのかなどを教えていただけると、医師も血便の状態を把握しやすくなります。携帯電話などで、写真を撮ってきて頂いてもけっこうです。
 自分の健康のバロメーターともなる便の状態を把握し、異常がある際はすぐ発見できるようにしていきたいですね。


(平成30年6月30日)

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