宮川内科・胃腸科医院
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Dr宮川の注目コーナー

  血便について そのB
Bのその他篇です。
《痔核》
 痔核とは、肛門を閉じる働きをする部位に、排便時のいきみや、長時間の同一姿勢、重い物を持ち上げるなどで負荷が掛かり、うっ血することでできるいぼ痔のことです。肛門の内側に出来る内痔核と外側に出来る外痔核があります。
 内痔核では、排便時に出血し、トイレットペーパーに鮮血が付いたり、シューっと迸って便器が赤く染まる事があります。軽度の内痔核では痛みを伴いません。
 外痔核は、痛覚を伴う皮膚に出来るため痛みを伴い、出血することもあります。

《裂肛》  
 切れ痔の事です。排便時に出血と痛みがあり、排便後にも傷みが持続するのが特徴です。

《虚血性大腸炎》
 高齢者に多く、動脈硬化などの血管側の要因と、便秘などによる腸管側の要因が絡み合って起こります。症状は突然の左下腹部痛から始まり、それに引き続き、水様性の下痢や下血が見られます。

《潰瘍性大腸炎》
 10歳代後半から30歳代前半に好発する、原因不明の炎症性疾患です。下痢、粘血便、腹痛、発熱などが症状としてみられます。

《薬剤性出血性大腸炎》
 抗生剤(特にペニシリン系)摂取数日後に、血性の下痢、腹痛で急激に発症します。トマトケチャップ様の血便が出ますが、初発時は水様便の事もあります。 

《大腸憩室出血》
 憩室とは、大腸壁の弱くなった部位が大腸の圧迫によって外側に袋状に押し出されたものの事で、内視鏡で見ると、くぼみのようになっています。この、大腸憩室の合併症の1つである大腸憩室出血は、高齢者に好発し、典型例では、無痛性の下血、血便で発症します。

 今回紹介したのは、血便が出る病気の一部です。血便が出る原因には様々なものがあり、なかには命に関わる病気もあります。そのため、血便が出たときは、自己判断で「大丈夫」と思わず、医療機関を受診することをお勧めします。
 受診する際には、血便の色(黒いか、赤いか)、量(多いか、少ないか)、血便の色が赤い時は、血液と一緒に粘液がまじっているか、便の表面に血液が付着しているだけか、便と血液がごちゃまぜに混ざっているか、血液だけ飛び散るように出ているのかなどを教えていただけると、医師も血便の状態を把握しやすくなります。携帯電話などで、写真を撮ってきて頂いてもけっこうです。
 自分の健康のバロメーターともなる便の状態を把握し、異常がある際はすぐ発見できるようにしていきたいですね。


(平成30年6月30日)

  健康診断で血圧が高いといわれたら
皆さん、健診は毎年受けていらっしゃいますか?血圧はほとんどの方が測ると思いますが、血圧が高めですね、と言われたことはないですか?
血圧は運動や精神面、食事、気温などさまざまな影響を受けやすく、常に変動しています。1度だけでなく自宅でも時間を決めて測ってみましょう。

血圧は座った状態で測ります。この際、数分間の安静ののち、大きく何回か深呼吸をしてから測定するようにしてください。
これで血圧が135/85mmhg以上の場合は高血圧の可能性が高いです。

また、生活習慣を改めることで高血圧を改善することにつながります。
(1)食塩は1日10g未満、できれば6g未満を目標に
食塩の摂りすぎは高血圧の大きな原因になります。
(2)食べ過ぎを避け、肥満を防ぐ
(3)禁煙をする、アルコールは控えめに
(4)ストレスをためないような生活を
(5)軽い運動で肥満予防、ストレス予防

減塩生活を心がけるようにすることで循環血液量の増加が抑えられ血圧の上昇を防ぐことができます。摂取量を減らす工夫を始めましょう。

【食塩1gを含む調味料の量】
濃口しょうゆ7g(小さじ1強)
薄口しょうゆ6g(小さじ1)
ウスターソース12g
※普通のラーメン1杯で6g前後の食塩が含まれています!普段からの食生活の見直しが大切ですね。

しかし、高血圧が長い間持続すると全身の動脈硬化が進行し、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞、狭心症や心不全などの心臓病、腎硬化症や尿毒症などの腎臓病、頸動脈狭窄や下肢閉塞性動脈硬化症、高血圧性網膜症などの眼の病気を引き起こす原因となります。高血圧をそのまま放置することなく専門医と相談することが大切です。


(平成30年8月31日)

  胃内視鏡検査による胃がん検診について
みなさん、胃がん検診は受けていますか?
がんの中でも日本人に多く見られるのは胃がんです。
胃がんは一般的に初期段階では自覚症状がほとんど現れず、異常と感じる症状が現れた時には、進行がんの段階に入っていることも少なくありません。胃がんを早期に発見するには定期的に胃がん検診を受けることが大切です。

では、胃がん検診はどのようにして受けられるのでしょうか?
胃がん検診は、市町村や職域で行われている「対策型検診」と人間ドックなどの「任意型検診」で行うことができます。

この「対策型検診」での胃がん検診に近年、大きな変化がありました。

今まで、胃がん検診としてバリウム検査のみが行われていましたが、近年、胃内視鏡検査における胃癌死亡率減少効果の科学的根拠が証明され、胃内視鏡検査による胃がん検診が採用されるようになってきました。科学的根拠を証明した研究では「3年間に1度でも胃内視鏡検査を受けることで胃がんによる死亡率を30%減少させる効果がある」と報告されています。その一方、バリウム検査も胃癌死亡率減少効果を示しましたが、有意ではないこともわかりました。
こうして、従来はバリウム検査のみだった胃がん検診は、2016年4月よりバリウム検査か胃内視鏡検査を選べるようになったのです。(市町村によって胃がん検診の内容は異なります。ちなみにつくば市では2019年6月頃より胃内視鏡検査による胃がん検診が開始されると決まったと伺っています。)

今までバリウム検査で異常があると診断された場合は、医療機関で胃内視鏡検査による再検が行われていましたが、胃内視鏡検査による胃がん検診では、1度の検診で、生検といって異常が疑われる部位の細胞を一部とって詳しく調べることもできます。特に、ピロリ菌感染歴のある方は、科学的根拠の証明された胃内視鏡検査による胃がん検診を受けてみてもいいかもしれませんね。

※胃内視鏡検査による検診は2年に1度の検診で50歳以上の方が対象となります。バリウム検査による検診はしばらくの間は従来通り40歳以上の方を対象に1年に1度行われます。


(平成30年12月14日)

  鼻からの胃カメラ検査は口からの胃カメラ検査より安全で楽なのか?
前回、胃カメラによる胃癌検診についてお話ししましたが、「胃カメラはオエッとなるので嫌だ」と、抵抗をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

胃カメラには、口からの経口内視鏡検査と、鼻からの経鼻内視鏡検査があります。
この2つの検査、何が違うのかというと、まず、使用するカメラが違います。口からの経口内視鏡は直径が約10mmであるのに対し、鼻からの経鼻内視鏡は直径が約5mmと半分の細さです。
また、カメラの通る経路も違います。口からの経口内視鏡は口から入っていくので、舌根部(舌の付け根)に触れながらカメラが入っていきます。そのため、オエッとなる嘔吐反射が起こりやすくなります。しかし、鼻からの経鼻内視鏡は鼻から入っていくので、カメラが舌根部に触れず、そのため経口内視鏡に比べると嘔吐反射は起こりにくくなっています。

実は最近、胃カメラ検査が身体に与える影響を評価した報告が発表されました。この研究では、検査前、検査中、検査後の酸素飽和度(血管の中に流れている酸素の量)、血圧、脈拍、嘔気の回数を測定しています。
結果として、口からの胃カメラ検査では鼻からの検査よりも検査開始後の血圧上昇、脈拍増加が見られ、酸素飽和度も著名に低下していました。鼻からの胃カメラ検査では嘔気の回数が口からの検査より有意に少ないという結果が見られました。
また、鼻からの胃カメラ検査をした人たちの中で、過去に口からの検査をしたことがある人の大半は、次回以降も鼻からの胃カメラ検査を希望しました。
この結果から、鼻からの胃カメラ検査は、口からの検査より心肺機能に与える影響が少なく、患者の忍容性が良好と結論づけられました。

初めて胃カメラ検査を受けられる方や、口からの胃カメラ検査で辛い経験のある方は、鼻からの胃カメラ検査を選択されてもよいかもしれません。


(平成31年1月15日)

  ピロリ菌の除菌による胃がん抑制効果について
ピロリ菌(正式名称ヘリコバクター・ピロリ)は強酸性の胃の中でも生息できる、消化器疾患に大きく関わりのある細菌です。

ピロリ菌が発見されるまで、胃・十二指腸潰瘍などは、ストレスや生活習慣が主な原因と考えられていましたが、ピロリ菌の発見・研究により、胃炎や胃・十二指腸潰瘍はピロリ菌の感染が原因となっていることが明らかとなりました。
この発見により、ピロリ菌の除菌治療が行われるようになり、胃がんや再発を繰り返す胃・十二指腸潰瘍の治療に革命がもたらされました。

最近行われた研究では、ピロリ菌除菌治療による胃がん抑制効果について、日本人を含むアジア人の無症候性ピロリ菌感染者が除菌すると、男性は15.3人、女性は23人に1人の胃がん発生を抑制できるという結果が報告されています。

しかし、ピロリ菌除菌に成功したからといって、胃がんにならなくなったわけではありません。ピロリ菌に感染していた期間が長いと、胃の粘膜が炎症を起こしており、正常の胃粘膜に戻るまで時間がかかるからです。
ピロリ菌除菌後も、定期的に内視鏡検査を受け胃の状態を定期的に確認することが大切です。

※ピロリ菌の除菌について、Dr.宮川の注目コーナー16ページの「ピロリ菌について」に詳しく記載しています。合わせてご覧ください。


(2019年2月22日)

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